孝行娘の話-三条市の民話ー

『郷土誌資料集 井栗』より

昔あるところに、
裕福な旦那に娘が三人いた。

ある日、旦那がお上の御用で山道を通っていたら、

「キャ キャッ」

とものすごい音がした。

音を頼りに行ってみると、
大蛇が大きなふくがえるを
呑もうとしていたところだった。

可愛そうに思った旦那は、

「これ、助けてくれんか、
俺の娘一人、お前にやるから」

というと、
大蛇はカエルを飲み込むのをやめて、
何月の何日に迎えに行くと日を決めた。

 旦那は家に帰ったが、
段々とその日が迫って来ると、

「日取りを決めたはいいが、
娘が行ってくれなければ、
俺はあの大蛇に一呑みにされる」

と心配になって、
とうとう病気になってしまった。

旦那が何にも口にせず寝ているので、
一番目の娘が

「おとうちゃん、お湯かお茶でも入れようか」

と聞いた。

「お湯もお茶もいらない、
山の大蛇のところへ行ってくれないか」

と行ったところ、

「何馬鹿なこと言うんだ」

と怒って出て行ってしまった。

二番目の娘にもお願いしたところ、
一番目の娘と同じことを言って
出て行ってしまったので、
旦那はもう駄目だと
死にそうになっていたのだが、
三番目の親孝行の娘がやってきて、

「おとうちゃんの具合がよくなるなら、
どこでも行きます」

と言ってくれた。

やがてその日が来ると、
大蛇はいい男に化けて迎えに来た。

旦那の一家そろって、

「可愛そうに、
今晩あの子は大蛇に呑まれてしまうんだ」

と泣いて別れた。

 娘は男についていき、
段々奥山の池のそばへ行った。

大蛇が

「ここが俺の家だ、さあ入れ」

と言ったが、娘は

「あなたは水の者だ、私は丘の者だ」

と拒否した。
しかし男は聞かずに入れ入れと言うので、

「これも丘の者だから、
これが水に沈んだら私も入る」

というが早いか、
ひょうたんを池に投げ込んだ。

大蛇は

「ひょうたんさえ沈めば」

とぴょんぴょんひょうたんを叩いたが、
全く沈まない。

とうとう沈まないうちに
力尽きて動かないようになってしまったので、
娘はそれを見て針を千本投げたら
大蛇は死んでしまった。

 娘は家へ帰ろうとしたが、
あたりは真っ暗になってしまった。

どうしたことかと見まわしたら、
とことこと1つあかりが見えたので、
そこへ訪ねて行った。

その家にはたった一人、
きたならしいお婆さんがいて、

「どうしてこんなところへ来なさった」

と聞くので、
娘が話をしたところ、

「俺はその助けてもらったカエルです。
お礼にお前さんを助けてあげます。」

というが早いか、
自分のつけていたお婆さんの皮をぬいで
娘に着せ、

「荷物はこのすすけたコモにくるんで、
背負って行きなさい。

ここを行くと、道が二つに分かれている。
右の方に行くと、
大きな酒屋があるからそこへ行って、
飯炊きに置いてもらいなさい」

と丁寧に教えてくれた。

娘はカエルの言う通りに進んで酒屋にたどり着いた。
酒屋に入って一生懸命に頼み、
なんとか飯炊きにおいてもらった。

 娘は毎日、
すすけた二階で
お婆さんの皮を脱いで手習いしていた。

そこの酒屋の一人息子が、
毎日お婆さんが二階で何をしているのかと
部屋をのぞいたところ、
そこにいたのが娘で、
大そうたまげて二階から落ちて氣を失ってしまった。

家中大騒ぎで医者を呼んだのだが、
医者でも治らないし
何しても効き目がないので、
占い師に見てもらうことにした。

占い師は

「ここの家の番頭、女、子供、親類の
誰でもいいから、
水か湯を持って行って、
病人が一口でも飲めば治る。
飲まなければ死ぬ。」

と言ったので、
みんな代わる代わる水か湯を持って行ったが、
息子は目をあけない。

もうだめかと家中悲しんでいたが、
誰かが、

「飯炊きの婆がいる」

と婆を連れてきた。

娘は

「私のような婆が…」

と言ったが、
それでもみんながやれやれというので、
お婆さんの皮を脱いで、
元の姿になってお湯を持って行ったら、
息子は目をあけて

「お前の湯なら飲もうか」

と一口飲んだら、たちまち重い病も治った。

それから娘は酒屋の嫁になって、
一生安楽長者に暮らしたそうだ。

(原文要約)