猿の嫁どり(村の民話)-三条市の民話ー

『郷土誌資料集 井栗』より

 昔々、お爺さんと三人の娘が住んでいた。

ある日お爺さんが山へ草刈りへ行ったところ、
草がたくさん生えていて
刈っても刈っても終わらない。

「この草をみんな刈ってくれるやつがいれば、
娘を嫁にくれるんだがなあ」

と独り言を言ったところ、
猿が聞きつけて

「お爺さんお爺さん、明日嫁をもらいに行くぞ」

と、草をみんな刈ってしまった。

 お爺さんは困ってしまって
家へ帰ってすぐ、寝込んでしまった。

三人の娘が心配して

「どうしたんだ、雑炊かお粥でも食べるか」

と聞いたところ、
お爺さんは

「何もいらないから、猿の嫁に行ってくれや」

と言った。

 一番目と二番目の娘は

「何を言うんだ、このくそジジイ」

とそれぞれ枕をぶつけて逃げて行った。

三番目の娘は

「そういう訳なら、私が行こう」

と言ったので、
お爺さんの病気はすっかり治ってしまった。

 翌日、猿が約束通り娘を迎えに来た。

嫁に行ってから何日かたって、
三月の節句の日に里帰りすることになった。

「何を土産に持っていこうか、
お前のお爺さんは何が好きだ」

と猿が聞くと

「うちのお爺さんは餅が大好きだ」

と嫁が言うので、猿は餅をついた。

「餅は何に入れて持っていこうか、
フツに入れていこうか、ハチに入れていこうか」

と猿が言うと、

「フツはフツ臭くなるし、
ハチはハチ臭くなるから、
臼のまま持って行ってくれ」

と嫁が言うので、
猿は臼のまま背負って行くことになった。

 途中、
けわしい崖っぷちに
きれいな桜の花が咲いていたので、
嫁が

「猿どん猿どん、
あの花をお爺さんの土産にしよう」

と言うので、
猿は臼を地べたにおろして
木に登ろうとしたので、
嫁は

「猿どん猿どん、
臼を地べたにおろすと餅が臭くなると悪いから、
背負って登ってくれ」

と言ったので、
猿は臼を背負って木に登った。

「嫁、嫁、この枝がいいか」

「もうちょっと上の枝がいい」

「これか」

「もっと上」

猿はとうとう
一番高いところまで登った。

「これか」

「あ、それそれ」

と嫁が言った途端に
枝がポキンと折れて、
猿は臼を背負ったまま真っ逆さまに、
上になり下になり谷底へ落ちて行き、

「嫁可愛い、嫁可愛い」

と叫びながら川を流れて行ってしまった。

 嫁は

「猿、猿、下になれ 臼、臼、下になれ」

と唄って小躍りしながら家へ戻ったと。

(原文要約)